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タレントアクイジション(人材獲得/TA)の領域は、ほんの数年前と比べても全く異なる様相を呈しています。

話題の中心にいるのがAIで、TAリーダーの84%が来年AIを業務に活用するとしています。しかし、それは2026年のTAをめぐる大きなパズルの1ピースに過ぎません。

TAリーダーが直面しているその他の課題も、同様に重要です。リーダーシップ・パイプラインは脆弱であり、スキルは新たな優先順位付けが必要で、働き方に関するポリシーは社員間に多くの摩擦を生んでいます。

乗り越えるべきことは多くあります。そして、誰もがどのAIツールを導入すべきかに注目していますが、より重要なのは、これらすべての要素をどう組み合わせてうまく収めるかです。

例えば、AIエージェント。企業は急いでチームに導入しようとしていますが、大半のリーダーは人間とAIが混在した労働力をどう管理すればよいか分かっていません。前人未踏の領域なので無理もありません。

スキルについても考えてみましょう。CEOたちはAI技術の専門性に強く焦点を当てていますが、TAリーダーは、変革を成功に導くにはクリティカルシンキングが必要だと理解しています。

これらの変化の中心に位置しているのがTAです。そして、目先の事象にとらわれない大局的な視点を持つタレントリーダーは、組織にとって欠かせない存在になりつつあります。

2026年のTAを動かす6つのトレンドを紹介します。

“私たちはAIを受け入れる必要がありますが、大局的な視点を見失ってはいけません。タレントアクイジションは人を扱うもので、人間の知性こそが常に差異化要因となります。”
Jeanne MacDonald, Korn Ferry’s CEO of Recruitment Process Outsourcing (RPO)

トレンド1:次の採用者は人間ではないかもしれない

人間+自律型AIチームによるハイブリッドが始まる

“これは遠い未来のシナリオではありません。人間とAIのチームのためのインフラは、今まさに構築されつつあります。”
Bryan Ackermann, Korn Ferry's Head of AI Strategy and Transformation

2026年に採用する“タレント”は、眠ることもなく、休暇を取ることもありません。ただし、時には使う側がストレスを感じるほど正常に動作しないこともあります(技術的なバグや不具合は依然として存在します)。

私たちがよく知っているAIツールとは異なり、これらの「AIエージェント」はほぼ自律的に行動し、継続的にプロンプトを与えなくてもタスクや機能を実行します。そして、2026年にはTAリーダーの52%がこれらをチームに加える予定でいます。

More than half of talent leaders plan to add autonomous AI agents to their teams in 2026.

AIエージェントは、もはや便利なアシスタントの域を超えつつあります。

独自のアイデンティティ、アクセス権限、そして責任を持つ「本物のチームメイト」になりつつあるのです。

未来のチームでは、まもなく人間とAIエージェントが肩を並べて働くようになるでしょう。

「これは遠い未来の話ではありません」と、コーン・フェリーのBryan Ackermannは言います。「人事関連のベンダーはすでにAIエージェントの従業員記録を作成しています。マイクロソフトはAIエージェントにセキュリティIDを発行しています。人間とAIが協働するチームのインフラは、今まさに構築されているのです」。

TAリーダーにとって、これは何を意味するのか

TAリーダーの仕事は、これまで以上に複雑になったということです。

採用はもはや、血の通う人間だけを対象とするものではありません。AIエージェントを業務に適合させ、オンボーディングを行い、人間と並行してそのパフォーマンスを追跡する必要があります。

年収10万ドルの人間と、2万ドルのAIエージェントのコストと能力のベンチマーク比較も重要です。しかし、本当の課題は技術的なものではなく、文化的なものです。

マネージャーが人間とAIの混合チームをどう率いるか。人間とAIが一緒になって働くワークフローをどう再設計するか。それこそが、2026年に人材リーダーが答えを出すべき問いなのです。

TAリーダーが取るべきアクションプラン

  • 今すぐ実験を始める

    「ツールをユーザーの手に渡して、とにかくやってみることです」と、コーン・フェリーのタレント・トランスフォーメーション担当シニアVP、 David Ellisは助言します。

    完璧なAIエージェントができるのを待つのではなく、エージェント的な能力を持つAIツールを今すぐ人々に提供し、定めた枠組みの中で自由に試してもらいましょう。そこから生み出されたものに、きっと驚かされるはずです。

  • 混合チームのためにマネージャーを育成する

    未来のリーダーたちは、人間とAIエージェントが協働するチームをどう管理するかを学ぶ必要があります。

    人間と機械の間でタスクをどう調整するのか。AIが下した判断をどう覆すべきか。AIを含むチームメンバー間の対立をどう扱うのか。

    これは全く新しいマネジメントスキルセットで、だからこそ「AI対応型リーダー」の育成が極めて重要になっているのです。

  • 人間とAIの引き継ぎを意識したワークフローを再設計する

    人間が価値を提供する場面と、AIエージェントが引き継げる場面を明確にマッピングします。特に注意すべきは仕事が人間からAIへと渡る瞬間で、そこが最も破綻しやすいポイントです。

  • 人間らしさが必要な場面を見極める

    Jeanne MacDonaldが指摘するように、AIエージェントを導入することは、タレント獲得における人間的なつながりを放棄することではありません。候補者は、採用プロセスを通じて人間と対話し、価値を認められたいと感じています。

Fast Forward
2036年の世界へ

TAのトレンドが2036年までにどのような変化をもたらしているか、フューチャーリスト/グローバルコメンテーター/Fortune 500ビジネス予測家のTom Cheesewright氏に聞いてみました。

Cheesewright氏は、カスタマーサービスにおいてAIエージェントが人間の1,000倍の数になると予測しています。AIエージェントはすべての電話に応答し、仮想アバターが店舗で買い物客をサポートするようになります。製造業や物流の現場では、ロボットが人間と協力し、倉庫や工場の自動化、配送業務の処理を担います。さらに、マネジメントやリーダーシップの分野でも、AIエージェントは人間の10倍の数になると予測しています。

コーン・フェリーの見解

タレントアクイジション(人材獲得)は、単に職を埋めるだけのものではなくなります。従業員、契約社員、ギグワーカー、アルムナイ(退職者)、そしてAIエージェントが肩を並べて働くエコシステムを構築・調整する役割を担うようになります。TAは単なる人員数では評価されず、人材とテクノロジーをいかに一つのシステムとして結びつけ、成長を促進するかによって評価されるようになります。

トレンド2:自分の頭で考えてからChatGPT

ほとんどの人は1ヶ月でAIを学べるが、クリティカルシンキングの習熟には何年もかかる

“批判的思考のスキルは、AIとの協働に不可欠です。優れた批判的思考スキルを持たずに、AIをうまく活用できる人を私は想像できません。”
Scott Erker, Korn Ferry’s Senior Client Partner and Skills Expert

CEOや取締役会のメンバーたちは、 AIに強く注目しています。彼らはAIスキル、AI認定資格、AIの習熟度、AIに関するあらゆるものを求めています。

一方で、2026年に本当に必要とされるスキルは何かという問いに対し、TAリーダーの73%が批判的思考と問題解決能力と答えています。AIスキルは5位にランクされているに過ぎません。

では、どちらが正しいのか? それは両方です。

TAリーダーは異なる視点を持っています。現場に近いTAリーダーは、AIを効果的に活用するためには、AIが生成するものを批判的に考え、それを最適に提供する方法を見極める能力が必要だと理解しています。

「批判的思考スキルは、AIと成功裏に協働するために不可欠です」と、コーン・フェリーのScott Erkerは説明します。「優れた批判的思考スキルを持たずに、AIをうまく扱える人を私は想像できません。何が幻覚(ハルシネーション)で、何が実際のデータなのかを理解するために、批判的思考が必要なのです」。

TAリーダーにとって、これは何を意味するのか

誰もが、最新のAI技術に習熟した人材を必死に採用したいように見えます。

しかし、賢明なのは、AIのアウトプットを評価し、その欠陥を見抜き、結果を信頼すべき時と覆すべき時を判断できる人材を採用することです。

こうした人材こそ、最近学んだツールだけでなく、次に登場するどんなAIツールにも適応できるのです。これらの人材は、比類なき人間の頭脳を使ってAIを活用し、実際のビジネス課題を解決し、成長を加速させる最適な方法を見つけ出します。

TAリーダーが取るべきアクションプラン

  • AIの知識だけでなく、批判的思考スキルを評価する

    候補者が「何を知っているか」だけでなく、「どう考えるか」を評価するためにアセスメントを活用します。候補者に複雑な問題を順を追って説明してもらい、曖昧な状況をどう分解するのか、複数の情報源から得た情報をどう検証するのか、を評価します。

  • 適応力と学習マインドセットを重視する

    今日使っているAIツールを来年は使っていないかもしれません。新しいシステムやプロセスに迅速に適応できる人材を採用するようにします。そして、環境が進化する中で学び続け、新しいスキルを身につける意欲を持つ人材を選びます。

  • 批判的思考を競争優位性にする

    競合他社が「今日のテクノロジー」に基づいて採用している間に、「次に何が来ても考え抜けるチーム」を構築するようにします。

Fast Forward:
2036年の世界へ

私たちは本質的にサイボーグになるでしょう—人間とテクノロジーの融合体です」とCheesewright氏は語ります。オフィスワーカーにとって、それは脳にチップを埋め込むことを意味するのではなく、パーソナルAIの力を意味します。自分の知識や行動に基づいて訓練されたデジタルアシスタントです。物理的な領域では、建設作業員や一部の医療専門職が外骨格を装着し、筋力と持久力を高めながら、怪我のリスクを減らすことになるでしょう。

コーン・フェリーの見解

人々がデジタルアシスタントや外骨格を身につけて職場に来るようになれば、創出されるパフォーマンスは全く異なるものになります。TAは、人間の潜在能力と拡張された能力を並行して測定する必要があります。資格の有無は重要性を失い、実証されたスキルが最も重要になります。公平で透明性のある評価は不可欠です。それは単にパフォーマンスを判断するためだけでなく、人間とテクノロジーが一体となって働く世界で、信頼と機会を構築するために必要なのです。

トレンド3:エントリーレベルの削減=将来のリーダー不足

今のコスト削減という経営判断が、将来のリーダーシップ危機を招く

取締役会で最も簡単に売り込める提案でしょう。

エントリーレベル(初歩的)の役割を担う人材をAIに置き換え、コストを数百万ドル単位で削減し、一晩で業績を向上させるというのは。

しかし、その削減しようとしているエントリーレベルやオペレーション/バックオフィスの役割から、未来のマネージャーやリーダーが生まれるのです。

2年間ビジネスを学んだ初級アナリストは、ジュニアマネージャーになります。すべてのプロセスを理解しているコーディネーターは、チームリーダーになります。人材を育成しながら戦略を練る中間管理職は、VP(バイスプレジデント)へとステップアップします。

そういった人材を削減するということは、今日得られる目の前の利益が、明日の大きな問題になるということです。

“若い、エントリーレベルの人材の採用を取りやめるのは大きな過ちです。これらの人材こそが、新しいテクノロジーを最も早く取り入れる人たちなのです。”
David Ellis, Korn Ferry

TAリーダーにとって、これは何を意味するのか

この先数年のことだけを考えれば、このコスト削減は魅力的に見えるでしょう。

しかし、2029年に新しいチームリーダーが必要になったとき、最も経験豊富な従業員がボットだったらどうしますか?

エントリーレベルやバックオフィスのポジションは、単にルーティン業務をこなすためのものではありません。そこは、人々が企業文化を学び、プロセスを理解し、後に価値あるリーダーとなるための組織知識を身につける場でもあります。

こういった人たちがいないということは、外部からリーダーを採用し、ゼロから組織になじませるということです。

さらに、別の視点もあります。AIの導入によってエントリーレベルの役割を削減しているかもしれませんが、実は彼・彼女らこそがAIをよりうまく活用する手助けをしてくれる人材なのです。

「若いエントリーレベルの人材の採用をやめるのは間違いです」とEllisは主張します。「彼・彼女らこそが、新しいテクノロジーを最も早く取り入れる人たちなのです。もし自社にこうした人材がいないにも関わらず、競合他社にはいるとしましょう。競合はより速く、より機敏に、新しい機会に対応できるようになるでしょう」。

TAリーダーが取るべきアクションプラン

  • 役割を削除するのではなく、再設計する

    エントリーレベルの役割を完全に削減するのではなく、再構築しましょう。定型業務はAIに任せ、人間は判断力、関係構築、戦略的思考に集中できるようにします。

  • キャリア開発の道筋を加速させる

    キャリアパスは、もはや常に垂直方向ではありません。移転可能なスキルを特定し、従来の階段を一段ずつ登っていくような昇進に依存しない新しいリーダーへのルートを構築します。

  • 若手人材に投資する

    エントリーレベルの若手従業員は、コストが低く、適応力が高く、新しいテクノロジーの導入に優れています。AI主導の世界で必要な人材だと言えます。

  • 大学と連携する

    若手人材の役割を削減するのではなく、可能ならば大学と協力して卒業生に適切なスキルを身につけさるようカリキュラムを更新します。そうすることで強力な人材パイプラインの構築につなげることができます。

  • AIを考慮したサクセッション計画を立てる

    AIへの対応を考慮してリーダー層のサクセッションを計画している企業はわずか22%です。高いポテンシャルを持つ人材を特定し、育成を加速させることは有効です。

How Organizations Are Building Leadership Pipelines for an AI-Enabled Workplace.

Fast Forward:
2036年の世界へ

人材パイプラインは大きく変わります。従来の狭い道幅ではなく、動的なプールとして機能するようになります。企業の新卒採用プログラムは変化し、起業家的な働き方やフリーランスの機会が増加します。ソロワーク、スタートアップ、または緩やかなタレント集団が、今後は職場への一般的な入口となるでしょう。

コーン・フェリーの見解

TAは、職種に基づいてパイプラインを構築するのではなく、スキルに基づいて構築するようになります。つまり、移転可能な強みを見極め、その裏付けを得た上で、データを活用して企業全体で追跡・再配置するということです。うまく実行できれば、この「スキルファースト」モデルは、人々のキャリアを推進し、組織にレジリエンスをもたらします。

トレンド4:同意を得ないままのAIツール導入

AIへの投資は進んでいるが、肝心な準備は整っていない

CEOや取締役会は AIに数十億ドルもの投資をしています。ROI(投資収益率)は不明確で、タイムラインは野心的ですが、急速に支出しているのは、競合に取り残されることを恐れているからです。

リーダー層が財務的なリターンに不安を抱いている一方で、TAリーダーも、この劇的な変化を乗り越えるための経営陣の準備が整っているかどうかについて、同様に懐疑的です。

テクノロジーはすでに存在し、ツールも導入されています。では、従業員の準備は? 混乱の最中でしょう。

2026年に求められるのは、AI対応型リーダーという新しいアプローチです。

今必要なのは、この劇的な変化を率いることができる人物です。最適なアプローチを戦略化し、ロードマップを策定し、従業員をその旅路に引き込むことができるリーダーです。

テクノロジーは最近出現したばかりかもしれませんが、変化を率いる能力は一夜にして身につくものではありません。

コーン・フェリーの調査に回答した企業のうち、リーダーが人間とAIエージェントを組み合わせたチームを効果的に管理できると信じているのはわずか22%でした。しかし、それこそが2026年に多くの企業が成功するために必要なことです。

これは単なる技術的リテラシーの問題ではありません。より大きな課題は、リーダー自身ですら完全には理解していない変化について、誠意のあるコミュニケーションを取ることです。

「2020年に私たちが経験したことを思い出してください。新型コロナウイルスの初期段階で、優れたリーダーたちは従業員に非常にシンプルで、しかし重要な質問を投げかけました」とAckermannは語ります。

「リーダーたちはこう尋ねました。あなたは大丈夫ですか、安全ですか、健康ですか? それは、しばらく見られなかったレベルの透明で誠実なコミュニケーションでした。そして、私たちはそれを再び失ってしまったのです」。

今日、AIに関してはその誠意のあるコミュニケーションが消えています。不確実性や変化について率直な会話をする代わりに、従業員は自社のAI戦略を断片的に推測するしかありません。

「多くの人々が自社のAIに対するスタンスを理解していないことを、私たちは確認しています」とAckermannは付け加えます。「その情報は、AIセキュリティポリシーの62ページ4b項に隠されているといった具合で、CEOがレイオフ(解雇)を発表するまで、従業員はほとんど何も知らされないのです」。

TAリーダーにとって、これは何を意味するのか

TAリーダーは難しい立場に置かれています。経営陣はAI変革に数十億ドルを投じていますが、人々をその変化に導く準備は整っていません。

一方で、TAリーダーはAI戦略を実行することを期待されていますが、チームは自社がAIについてどう考えているのかを理解できていません。

トップから明確な方向性がなければ、それは苦難の道となります。

  • 従業員は理解できない変化に抵抗する
  • マネージャーは、トレーニングを受けていないツールを支援できない
  • 成功の定義が誰にも分からないため、プロジェクトは停滞する

重要なのは、経営陣のAIへの野心と、それを実現するために必要なリーダーシップスキルの間のギャップをどう埋めるかを理解することです。

TAリーダーが取るべきアクションプラン

  • リーダーシップ開発を提唱する

    経営陣に、単なる技術スキルではなく、チェンジマネジメントとコミュニケーションに焦点を当てたAI対応型リーダー研修への投資を促します。

  • L&Dと連携してリーダーを育成する

    人間とAIの混合チームを実際に管理できるリーダーを特定し、必要になる前に育成するために、L&D(ラーニング&デベロップメント)と協力します。

  • リーダーシップ不足が及ぼす影響を記録する

    リーダーシップの欠如がAI施策にどのような影響を与えているかを記録します。プロジェクトがリーダーシップ不足で失敗した場合、その実際のコストを経営陣に理解してもらいます。

  • コミュニケーションギャップを埋める

    組織のメッセージが十分に明確でない場合、採用マネージャーや候補者に対して、会社のAIに関する立場を積極的に説明します。

Fast Forward:
2036年の世界へ

2030年代には、従業員をメタバースへ移行させることがリーダーシップにとって最大の頭痛の種になる、とCheesewright氏は述べています。携帯電話以来初めての大きなデバイスシフトが起こり、より多くの労働者がミックスリアリティ(現実世界とデジタル世界の融合)のヘッドセットを主要な生産性ツールとして使用するようになります。仮想環境では、データに深く入り込み、AIアバターと対話し、地球の反対側にいる顧客と同じ部屋にいるかのように会うことができるようになります。

コーン・フェリーの見解

ミックスリアリティは、採用における「準備」の意味を変えます。TAは、物理的な仕事と仮想的な仕事の間を行き来できる人材を見つけ、没入型環境でそのスキルをテストする必要があります。アセスメントは公平性を考慮して設計され、すべての候補者が自分の能力を発揮する平等な機会を持てるようにしなければなりません。採用とリスキリングは連携し、新しいプラットフォームが仕事の進め方を再構築する中で、人々が自信を持って対応できるよう支援します。

トレンド5:TAにもっと戦略的な立場を

TAは単なる採用部門を超えて、戦略的なアドバイザーへと進化している

良いニュースです。ほとんどの人材リーダーは、今や企業のリーダーシップに対してより大きな影響力を持つようになっています。

では、悪いニュースは? 83%がC-suite(経営幹部)にある程度の影響力を持っていると答えている一方で、59%は依然として戦略的なビジネス決定から締め出されていると感じています。

TAは、この奇妙な中間地点に留まっています。以前より影響力は増したものの、依然として「ただ空きポジションを採用する人たち」として扱われているのです。

驚くべきことに、AIによってその差が埋まる可能性があります。

経営層や取締役会では、AIに注目が集まっています。これはTAがすでにリードしている分野であり、HRの他の領域よりも早くAIを導入してきました。そして今、そのペースは雪だるま式に加速しています。

興味深いのは、AIを活用しているTAリーダー(85%)は、そうでないリーダー(70%)に比べて、経営層への影響力を持つ割合が高いという点です。

考えてみれば当然です。企業がAI変革に数十億ドルを投じる中で、従業員にとって何が機能し、何が機能しないかを理解しているアドバイザーが必要です。そして、それこそがTAリーダーの役割になるのです。

TAのAI経験と、人間とAIをうまく融合させる能力は、影響力から戦略的な発言権への架け橋となる可能性があります。

TAリーダーにとって、これは何を意味するのか

TAはもはや単に採用を司る機能ではありません。ワークフォース変革に関する戦略的アドバイザーになりつつあるのです。

「TAのAIリーダーシップによって、TAリーダーはCHROにとって、CEOにとってCHROが戦略的アドバイザーかつ変革のリーダーとなったのと同様の存在になっています」とEllisは語ります。「TAは、新しい人材が組織に入るための門番です。TAはその鍵を握っており、上司はCEOに対してワークフォース変革について助言する必要があります」。

 

これまで築いてきたAIの経験は、その移行に完璧に適したポジションを与えています。準備ができているなら、今こそその一歩を踏み出す時です。

TAリーダーが取るべきアクションプラン

  • ビジネス部門が必要とするAIアドバイザーになる

    あなたの実践的な経験を活かして、より広範なAI戦略の議論をリードします。経営陣が「何が実際に機能するのか」について現実的な洞察を必要とする時、そのデータを提供します。

  • 採用を超えた戦略的スキルを身につける

    戦略策定、協働、影響力のスキルに焦点を当てます。ここまで導いてくれた技術的な採用スキルだけでは、今後に備えるには不十分です。

  • 明確なROIでビジネス成果を示す

    AI施策が、採用スピードの向上や競争優位性の確保といったビジネス成果をどのように生み出しているかを示します。「TAリーダーは、自分たちがもたらしているメリットをHRだけでなく、ビジネス全体に対して明確に説明し、実証できる準備を整える必要があります」とMacDonaldは助言します。

  • CHROとのアドバイザリー関係を構築する

    ワークフォース変革に関する洞察を提供する頼れる存在として、自分を位置づけます。CHROがCEOに対してタレント戦略を助言するのと同等の役割です。

Fast Forward:
2036年の世界へ

2026年時点では、従業員1人あたり100万ドル以上を生み出す企業はほんの一握りしかありません。しかし、Cheesewright氏によれば、2036年までには多くの企業が、従業員1人あたり数千万ドルを稼ぐようになるでしょう。その理由は、人員が減り、テクノロジーによって強化されるためです。つまり、2036年には新しい採用者1人の価値が2026年の100倍になります。その分、TAには大きなプレッシャーがかかるということです。

コーン・フェリーの見解

今後、1人の採用が非常に大きな重みを持つようになります。人員が減り、各人がテクノロジーで強化される中で、誤った採用判断はこれまで以上に大きな影響を及ぼします。TAは、質を見極め、リスクを減らすために、より精度の高いアセスメントと予測インテリジェンスを必要とします。公平性と説明責任を確保するためのガードレールも不可欠です。これらを正しく実行できれば、TAは企業成長を推進する最も強力なドライバーの一つとなるでしょう。

 

トレンド6:オフィス回帰のポリシーがTAの頭痛の種

仕事をする場を自分で選びたい優秀な候補者と、オフィス回帰を義務付ける企業があったとき、最も利を得るのは柔軟性を持った競合企業

利害の不一致は深まるばかりです。企業は人々をオフィスに戻そうとしています。現在、20%の企業がフルタイム出社を義務付けています。

しかし、従業員はこれに反発しています。コーン・フェリーのWorkforce 2025調査によると、従業員の約4分の3がハイブリッドまたはリモート勤務を希望しており、譲歩する者はほとんどいません。

この乖離は非常に大きく、TAリーダーは板挟みになっています。

フルタイム出社を強く求める企業の採用担当者は、適切な人材を見つけるのに苦労しています。逆に、完全リモートを提供する企業は、優秀な人材を自由に選べます。

フルタイム出社を要求する企業は、事実上、自ら選択肢を狭めていると言えます。ブランド力のある企業で働ける魅力があったり、より魅力的な報酬パッケージを提供できるのであれば、そのバランスを自社に有利に傾けることができる可能性はあります。しかし、ほとんどの場合、優秀な人材は柔軟性のある企業に流れています。

「もし自社のEVP(従業員価値提案)が十分に強ければ、例えば最大手ブランド企業である場合、職場回帰の要請を押し付けることができるかもしれません」とエリス氏は語ります。「しかし、ほとんどの企業にとっては、欲しい人材の期待に合わせてポリシーを調整する必要があります」。

TAリーダーにとって、これは何を意味するのか

TAは、会社の方針と候補者の期待の間で板挟みになっています。経営陣がフルタイムのオフィス勤務を強く求めるとき、優秀な候補者に「なぜ求める柔軟性を提供できないのか」を説明しなければならないのです。

もし自社のEVP(従業員価値提案)がオフィス勤務要件を覆すほど強くなければ、他社で働くはずの人材を引き付けるために高額な給与を支払うことになったり、オフィスのデスクに座ることを厭わない優先度の低い候補者を受け入れることになります。

TAリーダーが取るべきアクションプラン

  • 役割を必要性と人材体験でセグメント化する

    すべてに同じ勤務方針が必要なわけではありません。経営陣と協力して、どのポジションが本当にオフィス勤務を必要とするのか、どのポジションがハイブリッドやリモートで可能なのかを特定するようにします。

  • 柔軟性のある仕事環境の成果を提示する

    オフィス勤務の義務化による実際のコストを試算し、経営陣に提示します。そこには、採用に要する時間の長期化、高額な給与要求、優秀な候補者を競合に奪われる、といったことも含まれます。柔軟性のある仕事環境を提供しないことが、企業にどれだけのコストをもたらしているかを明確に示すのです。

  • EVPの他の要素を強化する

    オフィス勤務がどうしても必要というのであれば、EVPの他の側面、例えば報酬、福利厚生、成長機会が、その不利を補えるほど魅力的であることを担保する必要があります。

Fast Forward:
2036年の世界へ

オフィス勤務の義務化は過去のものになる、とCheesewright氏は言います。オフィスは、もはや従業員が日がな一日働く場所ではなくなり、オンボーディング、トレーニング、特別な会議のために使用される企業文化の中心地として機能するようになります。ただし、若手社員は例外です。パーパスに則って設計されたキャンパスで生活する機会が提供されることで、ビジネスを迅速に学びながら家賃を節約することができるようになるでしょう。

コーン・フェリーの見解

オフィスが働く生活の中心でなくなると、企業文化の伝達は採用時から始めなければならなくなります。TAは、企業文化とブランドが最初に体現される場として、候補者体験を担うことになります。AIは多くのルーティン業務を引き受け、人間がつながりと信頼を築くことに集中できるようにします。また、AIは企業文化を自社全体にスケールさせ、同じ物理的空間を共有しない従業員に対しても公平性と帰属意識を確保することになります。

TAリーダーが取るべき次のステップ

TAリーダーがこれほど必要とされ、戦略的影響力を発揮できる立場にあることは、これまでありませんでした。

TAは、経営陣がAIに慣れようと格闘している間にとうにAIを導入し、どのスキルが本当に重要なのかを理解しており、取締役会の耳に入る前に働き手の課題を見抜いているのです。

誰かに戦略的な会話に招待されるのを待つのではなく、自分から始めましょう。今、タレントに起きていることを経営陣に示しましょう。現実的に成果を発揮するポリシーの根拠を提示しましょう。組織の成功を形作る意思決定を導くために、あなたの経験を活用するのです。

この瞬間は永遠には続きません。これらの採用トレンドをつかんだTAリーダーは、競合が失敗する合間に自らの役割を成功に導くことができるはずです。

調査手法

コーン・フェリーに所属する230人以上のタレントスペシャリストとコンサルタント、そして1,600人以上の企業のタレントリーダーに調査を行いました。調査対象は、あらゆる企業規模、国、業界にまたがります。

調査では、AIの影響、リーダーシップの準備状況、スキルの優先順位、働き方ポリシー、そしてTA(タレントアクイジション/人材獲得)の戦略的役割の進化について質問しました。その目的は、これらの変化がどう実務に反映されているかを理解することです。

回答者は、TAディレクターからCHROまで、スタートアップからFortune500企業まで、様々なセクターにわたります。

調査の結果、2026年のタレントアクイジションを形作る6つの採用トレンドが明らかになりました。それらのトレンドがどういう意味を持つか、コーン・フェリーのコンサルタントによるタレントリーダーへのインタビューも実施し、この変化を切り抜ける戦略的文脈や実務的なガイダンスも得ることができました。

さらに未来予測として、Tom Cheeswright氏によるIntersectionsモデルも活用。これは近未来予測のためのフレームワークであり、例えば変化への抑えきれない需要といった既存の圧力と、新しいテクノロジーや文化的・行動的な変化といった変化を解き放つトレンドがどこで衝突するかを分析するものです。

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