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World will not be destroyed by those who do evil,
but by those who watch them without doing anything. – Albert Einstein
悪い行いをする者が世界を滅ぼすのではない。
それを見ていながら何もしない者たちが滅ぼすのだ。―アルベルト・アインシュタイン
良いリーダーとジェンダーは関係あるのだろうか?上級管理職を対象としたリーダーシップスタイルの研究によると、良好な組織風土をチームに作り出すことで良い結果を出している男性リーダーと女性リーダーは共通して、状況に応じて幅広いスタイルを使い分けていることが分かった(※3)。つまり、リーダーの質を決めるのはジェンダーではなく「その人の行動スタイル」であるということだ。欧米を中心にした組織心理学の発展により、「やる気」を引き出す良好な組織風土を作るためにリーダーがとるべき行動は、何十年も前に実証的にあぶり出されている。リーダーシップ開発は精神論ではなく科学だ。その理論を理解して取り組めば、性別、障がいのあるなし、国籍、年齢といった違いにかかわらず良いリーダーになれるチャンスは誰にでもある。
にもかかわらず、日本社会において女性リーダーの割合が低いままなのは何故だろう。
トップの発言に「うん?と(疑問に)思うことはあったが指摘する機を逸してしまった」という委員会理事のインタビュー記事(※5)などを読むと、裸の王様に今に至る何十年間もの間、建設的なフィーバックを提供できてこなかった組織や社会の責任の重さは無視できない。同じジェンダーでも、育った環境も異なれば、持って生まれた性格も、大切にしている価値観も異なる筈だ。もし男性だけの会議が議題の難易度にかかわらず簡単に終わっているとしたら、エディーさんが言う学生時代の部活のような組織が日本の至る所にあるのではなかろうか。海外諸国は科学的に人材を育成している側ら、日本人はうさぎ跳びをしているようなものだ。
リーダーシップ行動に関すグローバル比較によると、日本は情報共有の会議が多く、合意形成を目的とした対話や議論が少ない傾向にある(1,873名, 2016, Korn Ferry)。加えて、多くの日本人リーダーはグローバルリーダーに比べてリーダーシップ行動がパターン化し、使えるスタイルの選択肢が少なく多様な状況に対応できていないことも分かっている(5,500名, 2018, ※1) 。
日ごろから対話や建設的な議論のファシリテーションをしてないので、議論が必要な場面でリーダーが多様な意見を上手に拾えなかったりまとめきれなかったりして、参加者が不満を溜めてしまうことが多い。つまり、リーダーと似た人が集まった同質性の高い組織は運営が楽なのだ。人々の価値観が多様化する中で、リーダーが異なるバックグラウンドの人の話に耳を傾け建設的な議論をリードできなければ、日本の社会に明るい未来はこないだろう。
こうしたスキルの構築は「多様性と調和」を大切にする日本社会にむけて、スポーツ、ビジネス、学校や政治など、あらゆる日本の組織が協調して取り組むべき、難しいが取り組み甲斐のある課題である。
そのうえで、私たち一人ひとりは何ができるだろう。
今回の問題は、一つの組織の問題でもなく、ジェンダーの問題でもなく、社会に多様性を受け入れられる風土があるかないかの問題だと感じている。自分は人と違ってもいいんだと自分に自信を持てる社会、異なる価値観や視点をそれはそれとして受け止められる社会に日本がなれるかどうか、いまそれが問われているように感じる。
社会の問題は私たちの問題だ。いま静観してしまっては社会は変わらない。人のことをいうのは簡単だが、はたと、私自身はどうなんだと、この文章を書いている。私は、家族や同僚、あるいは顧客の話を、ジェンダー、障がいのあるなし、国籍、年齢、役職に関係なく柔軟に興味をもって耳を傾けているだろうか。時にはならぬものはならぬと忖度せず伝えているだろうか。うさぎ跳びをしたり、させたりしてないだろうか。それぞれの人がそれぞれの立場で、あかるい未来を創るために今日からできることがあるように思う。今回のことをチャンスと捉え、すこし立ち止まって考えてみて欲しいと思っている。
Reference:
※1: Korn Ferry Japan, 2017,「コーン・フェリー・ヘイグループの、組織風土とリーダーシップ理論」
※2: 文藝春秋, 2015, 『エディー・ジョーンズとの対話 コーチングとは「信じること」』, P136. 生島 淳
※3: Hay Group Inc., 2003, “Styles Matters Why Women Executives Shouldn’t Ignore Their ‘Female Side’”
※4: 文藝春秋, 2015, 『エディー・ジョーンズとの対話 コーチングとは「信じること」』, P38. 生島 淳
※5: JIJI PRESS LTD., 2021, 「「不適切」だった森氏発言 山下JOC会長、弁明に擁護も」, https://www.jiji.com/jc/article?k=2021020500710&g=spo,