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【ホワイトペーパー】成果を生み出すリーダーシップと組織風土

エグゼクティブサマリー

今日、組織の成果は戦略やビジネス環境だけでなく、「人」と「チーム」の力に大きく左右されます。コーン・フェリーの最新研究では、リーダーの内面的な特性と、リーダーが作り出すチームの組織風土が、エンゲージメント、コミットメント、定着率といった測定可能な成果に直結していることが明らかになりました。コーン・フェリーがグローバル規模で収集したリーダーシップ・スタイルおよび組織風土調査(Styles & Climate, S&C)とリーダーの内面的要素を測定するKFCTD(Korn Ferry Competencies, Traits, Driver)アセスメントデータを分析した結果、明確なパターン -- リーダーの性格特性がチームの組織風土を形づくり、その組織風土がチームの成果を左右する --が見えてきました。適切なリーダーシップとチーム環境がそろえば、エンゲージメントは最大42パーセンタイル向上することがわかりました。これは、高いプレッシャーがかかる現代の職場において大きな優位性となります。

 

ビジネスインパクト

高い成果を出すチームは偶然に生まれるものではありません。慎重な採用、戦略的な昇進昇格、目的意識を共有したリーダーとチームの結びつきを通じて、意図的に作られるものです。人材不足や燃え尽き症候群、ハイブリッドワークの複雑さといった課題に直面する今、組織全体でエンゲージメントを強化する仕組みを理解、構築し、実践することが競争上の大きな優位性をもたらします。今回コーン・フェリーが行った大規模なグローバル研究から、リーダーやコンサルタントにとって重要な、データに基づいた明確な知見を導き出しました:

  • 測定可能な指標をもとにチームの組織風土を理解する
  • 良い組織風土を育むリーダーの特性を理解する
  • グローバル環境で活用可能なツールを通じてエンゲージメントを促進する

 

エンゲージメントの重要性

従業員エンゲージメント は、ビジネスの成功を予測する最も強力な指標の一つです。コーン・フェリーの研究から、リーダーシップ特性やチームの組織風土といった要素を測定し、強化することで、エンゲージメントをより上流の段階から高められることが明らかになりました。これは、組織が持続的に成果を高め、全社的に展開できる実践的な道筋を示しています。エンゲージメントの高い社員は、生産性が高く、より革新的で、成果へのコミットメントも強く、そして離職しにくい傾向があります。オープンな対話、明確な方向性、責任の共有、貢献の承認、そしてチームの一体感 といった要素からなるチームの組織風土は、従業員エンゲージメントに特に強い影響を与えます。

社員が組織からサポートされ、自分の方向性や目標が組織と一致していると感じるとき、より生産的かつ創造的になり、さらに成果へのコミットメントを高めながら、組織に長くとどまる傾向があります。その効果は個人のパフォーマンスだけに留まりません。コーン・フェリーのデータによると、エンゲージメントの高い企業は、売上成長率、利益率、顧客満足度のいずれにおいても、同業他社を常に上回る成果をあげています。

 

リーダーが組織風土と成果を形作る方法

コーン・フェリーの研究により、リーダーの性格特性がチームの組織風土を醸成し、その組織風土がメンバーのエンゲージメントを高めるという明確な因果関係が明らかになりました。具体的には、3つのリーダーシップ特性がチームの組織風土を強化すること、そこで生まれた良好な組織風土がチームのエンゲージメントを大きく高め、コミットメント、定着率、パフォーマンスに影響することがわかりました。また、個人と役割との適合性も依然として重要ですが、役割に完全に適合していないメンバーであっても、組織風土が良好であればエンゲージメントを高められることもわかりました。以下に詳細をまとめました。

  1. リーダーの個人特性がチームの組織風土に影響を与える外向性(Presence)、アジリティー(Agility)、邁進(Striving)の3つの性格特性のスコアが高いリーダーのチームは、スコアが低いリーダーのチームと比べて、組織風土のスコアが約30パーセンタイル高いことがわかりました。
  2. チームの組織風土は想像以上に重要チームの組織風土は、チーム単位のエンゲージメントを最大31%説明できることがわかりました。つまり、チームの雰囲気が良いほど、メンバーのやる気や一体感が高まるということです。特に、オープンな対話、明確な方向性、責任の共有、貢献の承認、チームの一体感 といった特徴を持つチームでは、チームコミットメント が高く、今の職場で長く働きたいという気持ちを強く持ち、自発的に努力しようとする意欲 も高い、という傾向が見られました。これらの要素は、本調査におけるエンゲージメントの主要な指標です。
  3. 役割への適合性も重要だが、チームの組織風土が違いを生む良好な組織風土は高いエンゲージメントと関連しています。もちろん、リーダーや社員がサクセス・プロファイルで定義した役割に適合している場合、どのような環境でも高いエンゲージメントを示す傾向があります。つまり、組織風土が良好であることと、サクセス・プロファイルとの適合度が高い、という条件がそろうことが、エンゲージメントを高めるのに最も効果的です。しかし興味深いのは、サクセス・プロファイルへの適合度が低い人でも、良い組織風土のチームで働くとエンゲージメントのスコアが10パーセンタイルから54パーセンタイルへと上昇しました。この結果は、良い組織風土は個人のサクセス・プロファイルとの適合度の低さを補い、より幅広い人々が意欲を保ち、チームの一員として活躍し続けられるようにする力を持っていることを示しています。

 

コンサルタントとビジネスリーダーへの示唆

チームのエンゲージメントを高めたいなら、まずは「働く環境=組織風土」に目を向けることから始めましょう。本研究結果は、チームの組織風土が、メンバーのエンゲージメントに大きな影響を与えることを示しています。リーダーとしての適切な特性を育て、チームの組織風土を早期のサイン(兆し)としてとらえ、さらにその知見をリージョンや組織全体に広げていくことで、役割との適合性にかかわらず、より多くの人が支えられ、ベストなパフォーマンスを発揮できるチームをつくることができます。

  1. 組織風土を形成するリーダーの特性を主眼に置く: 外向性(Presence)、アジリティー(Agility)、邁進(Striving)などの性格特性に焦点を当ててリーダーシップ開発とコーチングを行いましょう。
  2. 組織風土をエンゲージメントの先行指標として活用する:チームの組織風土はエンゲージメントに関連するリスクやチャンスを早期に把握できる、測定可能な指標として活用できます。
  3. 得られた知見をグローバルに適用する:本研究では、性格特性、チームの組織風土およびエンゲージメントの関係が、世界の主要地域でも一貫して確認されました。地域ごとの文化や慣習の違いが、アセスメントの基準グループ(norms) に多少影響を与える可能性はあるものの、根本的な関係構造そのものは地域を超えて安定しており、検証の結果でもその強さが裏付けられました。
  4. 誰もが力を発揮できるチームへ: たとえ内面的な特性が役割と適合していなくて も、チームの組織風土が健全であればメンバーは前向きに仕事に取組み、高い成果を上げやすくなります。

 

結論:リーダーシップが組織風土を形作り、組織風土がエンゲージメントを形作る

本研究の結論は明確です。リーダーがチームの組織風土をつくり、その組織風土がエンゲージメントを高めます。そして、高いエンゲージメントは、企業が最も重要視する、コミットメント、パフォーマンス、そして職場への定着を支える原動力となります。本研究は、組織が次に取るべき行動の明確な指針を提供しています。

エンゲージメントを高める性格特性、リーダーシップ・スタイル、組織風土を理解するためにデータを活用し、本当に重要なことを測定するサクセス・プロファイルを活用し、適材適所を念頭に置いて、配置・育成を行うより良い組織風土をつくる性格特性とリーダーシップ・スタイルに焦点を当てる人が生き生きと力を発揮でき、役割への適合度に関わらず、どんな人も成長し、成功し続けられる職場環境を作ることが大切です。

 

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