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Skip to main contentシニア ビジネスディベロップメント ディレクター 野見山 健一郎氏
「セールスイネーブルメントと聞くとテクノロジーの導入のように思われるかもしれません。実際は、組織的に協業を進めていく『協働プロセス』のデザイン、それを支援する『テクノロジー』の導入、パフォーマンスを上げる『人財戦略』、運用を行う『オペレーション』という四つのファクターを回し、データ分析を行いながらプロセスを見直すサイクルのことです。営業やサービス、マーケティングといった顧客と接する方々が、日々のやり取りの中で常に相手に付加価値を与え続けられるような、一貫性および拡張性のある仕組みづくりをいかに行うかということです」
セールスにおけるテクノロジー活用はどの程度進んでいるのか。世界500社の調査によれば、営業のデータ化、DX、効率化を目指してさまざまなセールステクノロジーが導入されており、全体の94%の営業組織が既にCRM(顧客管理システム)を導入している。
「1社当たり平均10種類のツールが導入されています。『今後12ヵ月で導入を検討しているものがあるか』と聞いたところ、平均4種類を導入予定でした。各社で非常に多くのツールが導入されています」
しかし、この調査からは課題も浮き彫りになっている。「自社のセールステクノロジーが日々の業務と連携しているか」と聞いたところ、「できている」と答えた営業組織は約27%だった。「自社セールステクノロジーがCRM等と統合され効率的なデータ活用ができているか」という質問では、「できている」と答えた企業は約28%だった。
「ツールは数多く入れているが、パッチワーク的な導入になってしまい、営業に対して効率性が上がっていない企業が非常に多いことがわかります」
また、別の調査からは「営業は勤務時間の30%しか、営業活動に使えていない」「マネジャー職は、チームメンバーへのコーチングに費やす時間の2倍の時間を社内レポーティングや調整に費やしている」という結果が出ている。つまり、営業担当者は潜在顧客に対して十分な時間を割くことができず、マネジャーも十分なコーチングもできていないということだ。
ここで野見山氏は、CRMの課題とその原因について解説した。
「CRMの課題は、導入に対して多くの時間とコスト割いていますが、ROIが期待外れになっていることにあります。売上予測とパイプライン管理の効果性が向上せず、営業組織の活用度も改善していない。原因としては『✓をつける』『情報を入力する』ことの重要性への営業の認識の低さが関係しています。営業はその行為に対する見返りが少ないと感じている。そして、営業は案件の成約に向けたステージと確率のみに着目する傾向が非常に強くなっています」
その根本原因といえるのは、CRMが顧客との関係を管理するために設計されておらず、営業マネジャーが営業担当者を管理するために設計されている点だ。
「そのため、顧客との関係・案件進捗や成約に向けたインサイト提供もありません。CRMではこうした現場が望むこととのズレが起こっています」

「そのうえで『顧客起点』の関係性向上・案件進捗・成約率向上に向けて、次にどんな行動が必要かといったインサイトやアラートを提供できるものをつくることです。インプットの見返りがあるツールとなることが望まれます」
ここから野見山氏は、それらを実現するために必要なステップについて解説した。
ステップ1.「顧客起点」の営業(行動)プロセスを設計する
世界のトップ企業では、プロセス全体を今一度見直す傾向が強くなっている。そこでは改革の入り口として、営業(行動)プロセスを「顧客起点」で設計し、顧客の変化に柔軟に適応させている。
「そうすることで各社よい成果が得られています。調査結果を見ても、顧客の意思決定プロセスにきちんと適用できている企業は、そうでない企業よりも案件の勝率が約17.9%高く、現場の営業も個人目標を達成している達成者率が11.8%高くなっています」
さらに世界トップ企業では、マーケティング・営業・カスタマーサポートの縦割りの役割分担から脱却し、より横串にシームレスの連携を行える運用モデルのシフトに取り組んでいる。
「それによって情報共有もシームレスに行われ、顧客が継続的に複雑化するようなパターンでも、連携して対応できる仕組みづくりが行われています」
ステップ2-1.「顧客起点」の営業(行動)プロセスを組織的に運用する
次に野見山氏はマトリックス図で示した分析レポートを紹介した。この図は横軸に「営業の行動プロセス」、縦軸に「顧客リレーション」を取って、営業の現状がどうなっているかを示したものだ。黒部分はレベル1で「属人営業」、グレー部分はレベル2で「形式上のプロセス」、緑部分がレベル3で「正式プロセス」と「ダイナミックプロセス」を示している。

ステップ2-2.「顧客起点」の営業(行動)プロセスを組織的に運用する
世界トップ企業では具体的な営業プロセスにおいてどんなことを行っているのか。野見山氏はそのポイントをまとめている。
ステップ3.「顧客起点」の営業(行動)プロセス運用とセールステクノロジーを連携させて定着を図る
世界トップ企業では、まずプロセスを見直し、それを支援するテクノロジーを導入して連携させ、定着を図るアプローチが行われている。
「全体の75%において、きちんとCRMを使っていると勝率が高くなるというデータが出ています。中でも『正式プロセス』『ダイナミックプロセス』で連携させたほうが勝率も20%ほど高く、同様に目標の達成者率も高くなっています」

実際に同社がセールスイネーブルメントのソリューションを提供した企業においては、平均で案件の成約率は約21%アップ、個人目標の達成者率は31%アップという成果が出ている。顧客からのフィードバックでは「インサイトがきちんと得られるので今取るべき案件は取れるし、その次のレベルにある案件における顧客とのリレーション向上も図れ、これから案件をつくるレベルも非常に使いこなせている」といった声が聞かれている。
「実際の業務の進め方においては、小さいところから始めて徐々に広げていくといったやり方も可能です。始めに顧客起点の営業プロセスを描き、そして、パースペクティブ・セリングのプロセスを描く。そして、それに沿ったテクノロジーを導入していくといった手法を、ぜひ今後のセールスイネーブルメントの強化において検討いただきたいと思います」
