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Skip to main contentコーン・フェリー デジタル部門 シニア ビジネス ディベロップメント ディレクター 野見山 健一郎
■セールス・イネーブルメントとは
昨今耳にすることが増えたセールス・イネーブルメントという言葉。社員全員が日々の顧客とのやり取りの中で、付加価値を与え続けることができる一貫性と拡張性のある仕組みをつくることである。そこにはテクノロジー、人材、オペレーション&ガバナンス、データ分析などを通じて、顧客の変化に順応してプロセスを見直していくことが含まれる。野見山氏は次のように強調する。
「ここで特にお伝えしたいのは、各項目が縦割りにならないことです。例えば人材戦略は人事、プロセスは営業本部、テクノロジーはIT部門が担当されるケースが多々ありますが、点のアプローチだと少しずつずれが生じがちです。そうではなく、組織横断的に協業することが重要です」。
■人材投資はセールス・イネーブルメントにおける最重要項目
野見山氏はセミナー参加者に対し、営業組織、人材への取り組みの現状について3つの質問を投げかけた。
結果は、「2.既存の社員のアップスキルに投資」が一番多かった。実はこれはコーン・フェリーがグローバルで実施した調査結果と同じ傾向である。新規に社員を採用し、売り上げを上げられる人材になるまで、時間、コスト、リソースが非常にかかるからだ。

そんな要因を考えると、よく言われる社員のパフォーマンスレベルが2:6:2に分散されるという法則のボリュームゾーンである中間層(60%)のスキルアップを行い、行動変容を起こさせ、トップパフォーマーに近づけることが最も効率的ということになる。実際、この中間層をより顧客起点の行動がとれるように強化している企業が最も成長している企業なのである。
■成長企業が実践するセールス・イネーブルメントにおける人材戦略アプローチ
次に野見山氏は、成長企業が取り組んでいるイネーブルメントにおける人材戦略のアプローチに関する4つのステップを説明した。重要なのは、育成政策がこのプロセスを実践するところと連動できているかということである。第2回でマインドセットと行動変容というのは、日々の業務プロセスの中で変わってくると話した。日々のプロセスが関連していないと学んだことは身につかず、すぐに忘れてしまう。だからこの育成のプログラムの内容と、日々のプロセスが連動した内容の育成政策になっていないといけない。こういったところに気を付けて設計すると、定着度も高く、パフォーマンス度も上がると野見山氏は強調した。

◇ステップ1.人材要件定義
ビジネスチャレンジ、行動メソッド・プロセスを実践してパフォーマンスを上げていく部長、課長、リーダー、フロントなど各役割にどういった行動コンピテンシーが重要なのか、求められるコンピテンシーのレベルは変わってくる。適性と思われる性格特性、ドライバー(動機)は何か、こういった観点で人材要件を策定する。会社として、そのビジネスをきちっとやり遂げてチャレンジするために、どういう人材が必要か、そこに向けての育成政策、ゴール設定などを定義する。色々な課題に直面した時に、立ち返れる場所を持つということだ。明確で透明性を高くするという意味でも重要なアプローチとなる。
◇ステップ2:アセスメント
アセスメントも階層別に求められるレベルが違うので、ディレクター、マネジャー、リーダー、メンバーそれぞれの役割の要件定義を照らし合わせて行うことが重要である。それにより個々人が今求められるゴールに対して、現状どういった状況にあるのかを可視化し、その個々人の育成の測らなければいけないポイントを明確にすることができるのである。このようなゴール設定、現状とのギャップを明らかにするアセスメント、こういうステップをプロセス化していくことが、成長企業が育成オンボーデイングのプロセスを確立することに繋がる。
◇ステップ3.アセスメント結果の組織課題分析
そしてアセスメント結果が出たら、個々人で明らかにしていくことも大事だが、ダッシュボードという形で、マッピングする事も重要である。そうすることで、組織の育成上の課題が明確にみえてくる。特に実際のパフォーマンスとアセスメントの結果を縦横軸で見ていくと、この本来の意味、業績の数字だけでなくコンピテンシーや中身の部分も可視化することが重要だとわかる。そして強化が必要なのか、もしくはリプレイスが必要なのか、人材をマッピングして可視化しカテゴリーに分けて、育成プログラムを策定することが大事になる。
◇ステップ4.アセスメント結果に基づく育成計画策定
ラーニングはあくまでも机上の学習であり、現場で実践することと人から学ぶコーチングを受ける事が重要な要素になってくる。いわゆる「70:20:10の法則」はこういった観点をきちっと捉えた場合に、日々の業務プロセスと、ラーニングのコンテンツがきちっと同期することが、重要なポイントになる。ラーニングした後に、現場で実践をする。そしてさらに一貫性のあるコーチングを現場できちんと受ける。そうすることで顧客起点のマインドセットの行動変容の定着を加速させることになる。
そして、この育成政策の時に、メソッドとスキルは違うのでこの二つを混同しないできちっとすみ分けをし、育成政策プログラムを策定していくことが重要だと野見山氏は言う。
「課題として挙がった行動コンピテンシーを強化するのは、どのメソッドが重要なのか。今回はメソッドではなくスキルアップを測れば強化が測れるものなのか。こういった可視化された人材の状況を見ながら、設定することが大事になってきます」。
■パフォーマンスを牽引するためのコーチング活用
ラーニングジャーニーにおいてコーチングは重要なポイントになる。コーチングをしっかりプロセス化して定着させている企業は勝率、売上目標達成者の割合、そしてプロセスとメソッドの定着度も高い。確実に顧客起点のマインドセット、行動変容が期待できる仕組みになっている。実際、こういったメソッド・プロセス、テクノロジー、人材育成、この3つの観点が、きちんと組織横断的に取り組まれている、イネーブルメントとして実装されている、組織的に運用されている企業は、そうでない企業にくらべて、目標達成者の割合が高くなる傾向であることが調査からも分かる。

■現状診断ワーク
野見山氏は最後に「現状の診断ワーク」について説明した。12個の質問に対し、5段階で回答することで、自組織の現状を簡易的に診断できるものだ。診断を通して、合計スコアを見ると同時に、それぞれ人材要件定義、診断・評価、育成・ラーニング、強化・定着化の選択の中で、どこが自社の強みでどの辺が改善する現状の課題かが分かる。
